2017年2月7日火曜日

2016年言い渡し判決のまとめ

1 去年は早い時期にやれたのですが,今年はちょっと遅くなってしまいました。

 昨年言い渡された重要判決をピックアップしておきます。前回のやつは,ちょっと多すぎたような気がしましたので,今回は少なめで行きます。

2 重要判決
(1) 知財高裁平成27(ネ)10014(平成28年3月25日判決
 このブログでも紹介しました。 昨年は全体的に小粒な判決が多かったと思いますが(最高裁は0でした。),その中ではこれかなという所です。
 所謂マキサカルシトール大合議です。

 均等論の第一要件について,注目すべき判決です。ですが,その規範が非常にわかりにくかったのですが,その後出たH28(ネ)10007号,これを見て漸く私も理解できた次第です。
 つまり,本質的部分を先に認定し,それとの共通点を探すというやり方です。本質的部分を上位概念的に捉えれることができれば,均等論の範囲は広がることになります。

(2)東京地裁H28(モ)40004(平成28年4月7日決定
 このブログでも紹介した,著作権判例百選事件の保全異議事件の方です。
 何と言っても,事実認定が知財高裁の抗告審より面白かったので,こちらを選びました。
 本質は,A教授VS蛇蝎先生の争いなのですが,大学の先生がいかに幼稚で醜いものか(別にそれ自体は,人間的なことですから悪いことではありません。),それを満天下に示したということで,実に意義があると思います。東京地裁民事29部のナイスプレーだったのかもしれません。

 ところで,A教授に言わせると,蛇蝎先生は,ひどいストーカーだということですから,この争いは当分終わらないと思います。

(3)大阪地裁平成26(ワ)8187(平成28年5月9日判決
 このブログでも紹介しました。 検索連動型広告の商標権侵害事件です。実は,この記事の閲覧数が今の所,このブログで1位なのです。
 実は,このブログは大っぴらに公開してはいないのですが,結構注目されていた事件だということがわかります。

 似たような商売をやられ,そしてそれが検索で上位に来られて,非常に目の上のたんこぶ!みたいに思う場合は,この判決が参考になるでしょう。

(4)知財高裁平成28(ネ)10031( 平成28年12月8日判決
 オキサリプラチン事件なのですが,大合議の事件とは特許番号が異なります。こちらは,特許第4430229号です。
 何が問題かというと,クレーム解釈です。地裁では広い解釈で特許権侵害となり,この高裁では狭いクレーム解釈で,逆転で請求棄却(控訴認容) となったものです。

 どちらが妥当かというと,恐らくこの高裁の結論だと思います。しかし,判断する人によって180度クレーム解釈が違うということがわかり,特許権侵害訴訟の予測不可能ぶりが顕になったということで意義深いと思います。

(5)知財高裁平成26(ネ)10059(平成28年4月27日判決
 今回,唯一,このブログで紹介していない判決です。
 ソースコードの営業秘密性を認めた判決です。それ故,意義深いです。ですので,ありふれた表現だ,機能的表現だということで,プログラム著作権の侵害が認められない場合でも,営業秘密であるとして,不正競争防止法が使えるということが明らかになりました。

 以前の事例がどうだったかちょっとよくわかりませんが,今後は使えると思います。

3 まとめ
 ということで,特許2件,商標1件,著作権1件,不正競争防止法1件の計5件を紹介しました。
 参考にしていただければと思います。