2017年12月22日金曜日

侵害訴訟 特許 平成26(ワ)6163その2  大阪地裁 請求一部認容(特許Bについては517万円の限度で認容)

事件番号  平成26(ワ)6163
事件名  特許権侵害行為差止等請求事件
裁判年月日  平成29年12月14日
裁判所名 大阪地方裁判所第26民事部
裁判長 裁判官 髙 松 宏 之
裁判官 野 上 誠 一
裁判官 大 門 宏 一 郎

特許Bについて
構成要件該当性について
「(ウ) 構成要件E,F,(G)の意義
  上記(イ)のとおり,ロ号装置では,霊が近くにいる状況があれば,それが画面上認識し得ない場合でも,認識し得る場合でも,振動が発生することから,このようなものも,キャラクタの置かれている状況が「特定の状況にあることを判定した時に,上記画像情報からは認識できない情報を」「体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段」を備えているといえるか(構成要件F,〔G〕)が問題となる。
a  構成要件E及びFの文言からすると,「体感振動情報信号」によって伝達される情報は,「画像情報からは認識できない情報」であり,その内容は,キャラクタの置かれている状況が「特定の状況にある」という情報であると解される。そして,「特定の状況」自体が「画像からは認識できない」ものである必要があると解する場合には,構成要件Fの「振動情報制御手段」は,特定状況判定手段が画像からは認識できない特定の状況にあることを判定した時に,その画像からは認識できない情報を,体感振動情報信号として送出するものであると解することになるから,ロ号製品は,霊が近くにいる場合に,そのことが画面から認識できないか否かにかかわらず振動を発生させる点で,構成要件Fを充足しないことになる。また,構成要件Fの「振動情報制御手段」は,「画像からは認識できない情報」のみを送出するものである必要があると解する場合も,同様である。
 しかし,構成要件E及びFの文言上,「特定の状況」自体が「画像からは認識できない」ものであるとの限定や,「振動情報制御手段」が,画像からは認識できない情報「のみ」を送出するものであるとの限定は付されていない。また,本件発明B-1が,「遊戯者が入力手段を操作することにより…出力手段…から時々刻々と変化する画像表示がなされてゲームが進行する」ことを前提としている(【0022】)ことに照らせば,ある場面において画像情報から認識できる情報が,別の場面においては画像情報から認識できなくなる場合も当然に想定されることである。
 そして,ある場面において当該情報を画像情報から認識できる場合に体感振動情報信号が送出されるとしても,当該情報が画像情報から認識できなくなった別の場面においては,当該別の場面において当該情報に対応する状況が存在するか否かは画面から分からないのであるから,この場面で体感振動情報信号を送出することにより,「遊戯者は,周囲にその特定の状況を悟られることなく,自己のみが知り得る秘密の状態の下でゲームを進行していくことができるとともに,振動を体感的に知 25 得できることにより迫力や現実感が増大する」(【0025】)との本件発明B-1の作用効果をなお奏することに変わりはない。
 したがって,「特定の状況」とは,「体感振動情報信号」として伝達すべき「情報」が存在する状況であれば足り,それ自体が「画像情報からは認識できない」ものである必要はなく,また,「体感振動情報信号制御手段」は,「画像情報からは認識できない情報」のみを伝達するものにも限定されず,構成要件E及びFの「体感振動情報信号制御手段」は,ゲーム中のある場面において,キャラクタが置かれている状況が特定の状況であることが画像情報からは認識できない状況下で,当該特定の状況にあることを判定した時に,その情報を体感振動情報信号として送出するものであれば足り,キャラクタが置かれている状況が特定の状況であることが画像情報から認識できる他の場面において,その情報を体感振動情報信号として送出するものであることを排除するものではないと解するのが相当である。 ・・・
 したがって,画像情報からは認識できない情報が,あらゆる場面において画像情報からは認識できないものでなければならないという被告の主張は採用できない。
(エ) ロ号装置の構成要件充足性
a  構成要件A
 ロ号装置における「アナログコントロ-ラ(DUALSHOCK2)」が,構成要件Aにおける「入力手段」に相当するから,ロ号装置は構成要件Aを充足する。 ・・・
e  構成要件E  15
 ロ号装置における「上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて,フィールドモード及びファインダーモードにおいて遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況がキャラクタの近くに霊がいる状況にあるか否かを判定する状況判定手段」が,構成要件Eにおける「特定状況判定手段」に相当するから,ロ号装置は構成要件Eを充足する。 
 被告は,ロ号装置は,キャラクタが画面上の一定の領域に進行したこと等,画面情報から認識できる状況を契機として振動が開始するものであって,「画像情報から認識できない情報」たる「特定の状況」にあるか否かを判定したことにはならないと主張するが,「特定の状況」が「画像情報から認識できない」ものである必要がないことは前記のとおりである。また,ロ号装置が直接にはキャラクタが画面上の一定の領域に進行したこと等を判定するプログラムとされているとしても,ゲーム上,振動は霊が出現していることを示すものとして設定されているのであるか
ら,一定の領域に進行したこと等をもって霊が近くにいることを判定しているというべきである。被告の上記主張は採用できない。
f  構成要件F
 ロ号装置に係るゲームにおいては,キャラクタの近くに霊がいる状況にあることを画像情報からは認識できない場合に,キャラクタと霊との距離に応じて間欠周期の異なる間欠的な振動をアナログコントロ-ラ(DUALSHOCK2)に発生させる。したがって,ロ号装置は,「上記状況判定手段が上記所定の状況にあることを判定した時に,上記画像情報からは認識できないキャラクタの近くにいる霊の存在を,キャラクタと霊との距離に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせる(キャラクタと霊との距離が近づくにつれて,振動の間欠周期が短くなる)ための体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段」を備えており,ロ号装置のかかる「振動情報制御手段」は,「上記特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に,上記画像情報からは認識できない情報を,上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段」に相当するから,ロ号装置は構成要件Fを充足する。
 これに対し,被告は,キャラクタの近くに霊がいる状況にあることを画像情報からは認識できる場合であっても,キャラクタと霊との距離に応じて間欠周期の異なる間欠的な振動をアナログコントロ-ラ(DUALSHOCK2)に発生させるから,ロ号装置は構成要件Fを充足しない旨主張するが,上記(ウ)に照らせば,被告の主張は採用できない。
g  構成要件G
 ロ号装置における「上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせるアナログコントロ-ラ(DUALSHOCK2)」が,構成要件Gにおける「振動発生手段」に相当するから,ロ号装置は構成要件Gを充足する。 ・・・
  以上によれば,ロ号装置は本件発明B-1の構成要件を全て充足する。

イ  争点(1)イ(ア)(特許法101条1号所定の間接侵害の成否)について 
  ロ号製品は,上記アのとおり,本件発明B-1の技術的範囲に属する遊戯装置であるロ号装置を構成するPlayStation2本体に装填してゲームを実行するためのゲームソフトであり,PlayStation2本体に装填してゲームを実行するためのゲームソフトである以上,PlayStation2本体に装填されて使用される用途以外に,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途はない。したがって,ロ号製品は,ロ号装置の生産にのみ用いる物である。
 そして,ロ号装置は,本件発明B-1の構成要件を充足するから,ロ号製品は,物の発明である本件発明B-1に係る物の生産にのみ用いる物であると認められる。
 これに対し,被告は,ロ号製品が装填されたゲーム機が振動機能をOFFにした状態で使用されることがある(乙B5の1・2)から,ロ号製品は本件発明B-1に係る物の生産に「のみ」用いる物に当たらないという。しかし,ロ号装置が物の発明である本件発明B-1の各構成要件の構成を備えている以上,ロ号装置においてユーザが機器の振動機能を実際に使用するか否かは,ロ号製品が「その物の生産にのみ用いる物」に当たるか否かの判断を左右し得る事情ではない。 
 したがって,ロ号製品を製造,販売することは,特許法101条1号に基づき,本件特許権Bを侵害するものとみなされる。 」



無効の抗弁について
「(2) 争点(2)(無効理由の存否)について
  上記(1)のとおり,ロ号製品を製造,販売することは,特許法101条1号に基づき,本件特許権Bを侵害するものとみなされることから,本件発明B-1につては無効理由の存否が問題となるところ,当裁判所は,本件発明B-1に無効理由があるとは認められないと判断する。以下,詳述する。 ・・

 (ウ) 構成f
  証拠(甲B18の1ないし3,乙B14,16,17)によれば,ⅰ:「ニンジャウォーリアーズ」のベンチシートの振動開始後,しばらくするとゲーム画面に戦車が現れ,その後,戦車がゲーム画面から消え,間もなくしてベンチシートの振動も停止すること,ⅱ:この間の振動の状況は,別紙「公知発明bの振動状況」の図のとおりであること,ⅲ:同図の②の部分の囲み部分では,画面上,砲弾が着弾して爆発しており,そのために振動が微弱になっていることが認められる。そして,被告は,このような振動状況について,同図の②の部分には,同図の①の部分と異なる間欠周期の間欠的に生じる振動があると主張する。
 そこで検討すると,被告が主張する同図の①の部分では,小刻みに振幅の大きな 20 部分と振幅の微弱な部分とが交互に生じており,被告はこの小刻みな振動の繰り返しをもって間欠的な振動と主張するものと解される。しかし,一般に体感振動は身体にかかる力の強弱によって生じるものであるところ,本件特許B明細書では,そのような振動の中で振動を間欠的に生じさせるものとそうでないものとがあることが前提とされている(【0042】)ことからすると,本件発明B-1における「間欠的に生じる振動」とは,単に強弱が連続するというものではなく,強弱が連続しない部分があるものをいうと解するのが相当である。そして,このような間欠的に生じる振動の「間欠周期を異ならせる」とは,そのような強弱の連続部分と不連続部分とが繰り返されることにより生じる周期があり,キャラクタの置かれている状況に応じてその周期を異ならせることをいうと解するのが相当である。そうすると,被告が主張する同図の①の部分の小刻みな振動は,振動の強弱が連続しているにすぎない継続的な振動であるから,間欠的な振動には当たらないというべきである。この点について,被告は,本件特許B明細書の【0047】を指摘して,本件発明B-1では小刻みな振動も間欠的な振動とされていると主張するが,上記の検討からすると,同部分の記載の「間欠周期を序々に小さくして」,「間欠周期を序々に大きくして」とは,強弱の連続部分と不連続部分とが繰り返されることにより生じる周期を小さく又は大きくすることを意味すると解するのが相当であるから,被告の主張は採用できない。
・・
  (イ) 原告主張の相違点1-2について
  原告主張の相違点1-2は,その主張する構成fが採用できない以上,そのまま認めることはできない。しかし,上記ア(ウ)で認定した構成fに基づいても,本件発明B-1の構成要件Fにおける「振動情報制御手段」は,「上記特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に,上記画像情報からは認識できない情報 を,上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として送出する」ものであるのに対し,先に認定した公知発明b-1の構成fにおける「ボディソニック駆動情報制御部」は,
「上記特定状況判定部がニンジャキャラクタの近くに戦車が存在する状況にあることを判定した時に,上記画像情報からは認識できないニンジャキャラクタの近くに戦車が存在することをボディソニック駆動情報信号として送出する」ものであり,キャラクタの置かれている状況に応じて振動の間欠周期を異ならせるものではない点で相違すると認められる(以下,これを「本件相違点」という。)。
        (ウ) 小括
 以上によれば,本件発明B-1と公知発明b-1との間には本件相違点が存在する(上記アで認定した公知発明b-1の構成によれば,ほかに相違点が存在するとは認められない。)から,本件発明B-1には新規性に欠けるところはない。
ウ  進歩性欠如(本件相違点に係る構成の容易想到性)の有無
        (ア) 被告は,「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせる」との技術は,乙B18公報,乙B19公報,乙B20公報及び乙B6公報に記載された周知技術であると主張する。 ・・・
  (イ) 以上からすると,「キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせる」との技術は,それが開示されているとしても せいぜい乙B18公報のみであるから,周知技術であるとは認められない。
  また,乙B18公報記載の発明を,公知発明b-1に適用する動機付けを検討すると,乙B18公報に記載された発明は,レール上を走行するトロッコにおいて,レールの継ぎ目ごとに振動が発生し,その振動が発生する時間的間隔が速度によって変化するという性質を利用して,それをゲーム上で再現することにより,ゲームの臨場感を高めたものであると認められ,レールの継ぎ目の利用を離れて,抽象的に間欠周期の変化を利用する発明が記載されているとは認められないから,これを公知発明b-1において戦車が接近する場合の振動に適用する動機付けがあるとはいえない。
  したがって,本件発明B-1には進歩性に欠けるところはない。 」

損害額について
「 (イ) 実施料率に影響を与える本件での事情
  原告は,ロ号装置において本件発明B-1の作用効果が効果的に発揮されているとして,質的な観点に着目して本件発明B-1の実施の程度が大きい旨主張するのに対し,被告は,ロ号装置において本件発明B-1の作用効果が発揮される場面は極めて限定されるとして,量的な観点に着目して本件発明B-1の実施の程度が小さい旨主張する。
  この点,本件発明B-1の作用効果が発揮される場面というのは,キャラクタの近くに霊が存在するが,画面上霊の存在を認識することができず,かつ,フィラメントが発光していないという状況下で,しかも,単に振動が生じればよいのではなく,キャラクタと霊との距離に応じて間欠周期の異なる間欠的な振動が発生する場面に限られている。このような場面は,上記(1)ア(イ)のとおり,ロ号装置において生じ得るものの,キャラクタと霊との位置関係,フィラメントの点灯範囲及び振動の発生範囲に照らせば,そのような場面が生じるのは,極めて限定的であると考えられる。すなわち,そのような場面が生じるのは,霊がキャラクタの背後で接近し又は遠ざかるのに対して,キャラクタが向きを維持し続けるという状況に限られるが,ゲームの性質上プレイヤーがキャラクタを操作して霊を倒すことが求められる以上,プレイヤーは,通常,画像上で霊の存在を認識することができる位置にキャラクタを操作しようとすると考えられるから,霊がキャラクタの背後で接近し又は遠ざかって,振動の間欠周期が変化しながら,かつ,接近する霊の存在が画面上視認できないにもかかわらず,プレイヤーがなおキャラクタの向きを維持し続ける操作を行うことは,極めて限定的にしか生じないと考えられる。したがって,被告が主張するように,ロ号装置において本件発明B-1の作用効果が発揮される場面は極めて限定されるというべきである。他方,確かに,原告が主張するように,霊がキャラクタに接近するにつれて振動の間欠周期は短くなり,霊がキャラクタから遠 ざかるにつれて振動の間欠周期は長くなることによって,プレイヤーは,当該振動によりあたかも霊に対する接近度合いと心臓の鼓動とが一致しているかのような雰囲気を味わえ,高度な現実感や十分な迫力を得られるであろうが,それは,フィラメントや霊の映像によって霊の存在が画像上視認できる場合にも生じる効果であり,それらが画像上は視認できずに作用効果が発揮される場面が上記のとおり極めて限定されてしまう以上,本件発明B-1の実施の程度は前記の平均的な実施料率の場合に比べてかなり小さなものであると見るべきである。現に,原告が,本件発明B-1の作用効果がロ号製品の訴求力の1つになっていることを表す書込み等であるという甲B35の2ないし6を見ても,キャラクタの近くに霊が存在するが,画面上霊の存在を認識することができず,かつ,フィラメントが発光していないという状況下で,キャラクタと霊との距離に応じて間欠周期の異なる間欠的な振動が発生する場面のことに言及しているのかが判然としない内容になっている。
 他方,証拠(乙B32の11及び23,B33ないし35)によれば,作り込まれたストーリーや,美しいグラフィックと本物にこだわったサウンドによる演出,キャラクタがロ号製品の大きな訴求力になっていると認められる。そして,キャラクタと霊との距離については,距離が離れている場合には弱い振動にし,距離が近い場合には強い振動にするというように振動の強弱を変えることによっても表現することができないわけではないと考えられる。
(ウ) 小括
  ロ号装置において本件発明B-1の実施の程度が極めて低いことを始めとする上記(ア),(イ)の各事情を斟酌すると,原告が主張するような,本件が特許権侵害の事案における実施料率を考えるべき場面であり,通常のライセンス契約を行う場面とは異なるという事情を考慮しても,本件での実施料率は0.5パーセントとするのが相当である。
 したがって,原告が被告による本件発明B-1の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は,9億4000万円に0.5パーセントを乗じた470万円となる。また,認容額を始めとする本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告の特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士等費用の損害額は,47万円と認めるのが相当である。 」

【コメント 特許Bについて】
 大手のゲームソフトメーカー同士の特許権侵害訴訟の事件です。原告が大阪のカプコンで,被告が横浜のコーエーテクモです。  

 特許が大きくAとBに分かれているので,ここでも話を分けます。
 今回は,特許B(3295771)についてのみです。
   
 結論は,請求の一部認容です。無効の抗弁不成立で,構成要件該当性もあり,でした。
  クレームは以下のとおりです。

A  遊戯者が操作する入力手段と,
B  この入力手段からの信号に基づいてゲームの進行状態を決定あるいは制御するゲーム進行制御手段と,
C  このゲーム進行制御手段からの信号に基づいて少なくとも遊戯者が上記入力手段を操作することにより変動するキャラクタを含む画像情報を出力する出力手段と
D  を有するゲーム機を備えた遊戯装置であって,  
E  上記ゲーム進行制御手段からの信号に基づいて,ゲームの進行途中における遊戯者が操作している上記キャラクタの置かれている状況が特定の状況にあるか否かを判定する特定状況判定手段と,
F  上記特定状況判定手段が特定の状況にあることを判定した時に,上記画像情報からは認識できない情報を,上記キャラクタの置かれている状況に応じて間欠的に生じる振動の間欠周期を異ならせるための体感振動情報信号として送出する振動情報制御手段と
G  上記振動情報制御手段からの体感振動情報信号に基づいて振動を生じさせる振動発生手段と,
H  を備えたことを特徴とする,遊戯装置。


 これもさほど複雑なクレームではなく,ゲームの中である種の状況になったときに,コントローラーか何かがブルッと震えるというようなものです。
 例えば,本件のロ号は零というホラーゲームなのですが,画面では見えない霊が近づいたときにブルッと震える,というような使い方が想定されるわけですね。

 まず,構成要件該当性ですが,被告の方は限定解釈を主張します。曰く,「特定の状況」も画像情報から認識出来ないことが必要だ云々ですね。勿論,そのような場合でもいいのですが,判決はそういう場合に限らないのだと,比較的広く解釈していると思います。とは言え,そもそもクレーム等には限定がありませんので,ごく普通の文言解釈と言えるかもしれません。

 つぎに,無効の抗弁ですが,主引例とは,「キャラクタの置かれている状況に応じて振動の間欠周期を異ならせるものではない点」が相違すると認定されています。それ故新規性はあるわけです。

 進歩性の方ですが,副引例ではその相違点を埋めることが出来ないとして,進歩性あり!という結論です。
 これについては,主引例の認定が些か恣意的かなと思います。判決は,間欠の意義について,「本件発明B-1における「間欠的に生じる振動」とは,単に強弱が連続するというものではなく,強弱が連続しない部分があるものをいうと解するのが相当である。」と言ってますが,世の中に完全に静止できるものなんてあるのでしょうか?途中の弱振動の部分も程度問題だと思うのですね(人によっては間欠と判断するかもしれないってことです。)。

 ですので,同じ引例でも再チャレンジする意義はあると思います。勿論,再度調査を行い,新しい引例を探すのもいいでしょうね。そして,これで原告に一泡を吹かせるとよいかなと思います。

 最後に損害額ですが,間接侵害でしかも実施の効果が薄いということで,何と実施料率0.5%となってしまいました。

 この点については,通説では,特許法102条2項の推定規定は間接侵害でも適用があると考えます(例えば,東京地裁平成22(ワ)24479 ,平成24年11月2日判決)。

 にも関わらず,どうして,102条2項の主張をしなかったのか疑問です。
 もしかして,カプコンは自社で実施をしていなかったのかもしれません。

 なかなか色んな論点のある面白い事例だと思います。ただ,主戦場は知財高裁かなと思います。