2018年3月14日水曜日

審決取消訴訟 商標 平成29(行ケ)10169  知財高裁 無効審判 一部不成立審決 請求認容

事件番号
事件名
 審決取消請求事件
裁判年月日
 平成30年3月7日
裁判所名
 知的財産高等裁判所第2部                      
裁判長裁判官        森                義      之                            
裁判官       永      田      早      苗 
裁判官      古      庄              研  

「1  本件商標と引用商標との類否について
    (1)ア  本件商標は,前記第2,1のとおり,「ゲンコツコロッケ」の片仮名を,毛筆で書したかのような字体で,「ゲ」「コ」「ケ」をやや大きく,その余の文字をやや小さく一連に書してなり,「ゲンコツコロッケ」の称呼を生じるものである。そして,本件商標のうち「ゲンコツ」は,「にぎりこぶし。げんこ。」を意味する(甲6)。証拠(甲54~58,60,61,63,乙3)及び弁論の全趣旨によると,本件登録審決日当時,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあったものと認められる。「コロッケ」は,「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを,ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ,パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する(甲5)。
  本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合商標と認められるところ,その全体は8字8音とやや冗長であること,上記のとおり「コ」の字がやや大きいこと,「ゲンコツ」も「コロッケ」も上記の意味において一般に広く知られていることからすると,本件商標は,「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。
 また,本件商標の指定商品のうち本件訴訟において争われている指定商品は,いずれも,「コロッケ入り」の食品であるから,本件商標の構成のうち「コロッケ」の部分は,指定商品の原材料を意味するものと捉えられ,識別力がかなり低いものである。これに対し,上記のとおり,「ゲンコツ」は,食品分野において,ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあることから,「ゲンコツコロッケ」は,「ゴツゴツした,にぎりこぶし大のコロッケ」との観念も生じ得るが,常にそのような観念が生ずるとまではいえず,また,本件商標の指定商品の原材料である「コロッケ」は,ゴツゴツしたものやにぎりこぶし大のものに限定されていないのであるから,「ゲンコツ」は,「コロッケ」よりも識別力が高く,需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである。
 さらに,証拠(甲51,66~72)及び弁論の全趣旨によると,被告が,本件商標を使用して,「ゲンコツコロッケ」の販売を開始したのは,平成26年6月3日であり,販売開始は新聞の電子版で報道され,「ゲンコツコロッケ」は,人気商品となって,販売開始から短期間で多数個が販売されたことが認められる。しかし,本件登録審決日は上記の販売開始から約3か月間経過後であること,コロッケのような食品の需要者はきわめて多数にのぼると考えられることからすると,上記のような被告による販売の事実があるとしても,「ゲンコツコロッケ」が不可分一体と認識されると認めることはできない。
 以上より,本件商標の要部は「ゲンコツ」の部分であると解すべきである。
      イ  本件商標の要部「ゲンコツ」と引用商標とは,外観において類似し,称呼を共通にし,観念を共通にする。したがって,両者は,類似しているものと認められる。 」

【コメント】
 商標の無効審判の一部不成立審決について,審決取消訴訟を提起し,それによって残りの部分も無効となったという事件です。
 
 実は大した事件ではないのですが,被告が超大企業(ローソン)ということで,まあまあ面白いかなあという所です。

 被告の商標(登録第5708397号)は以下のとおりです。
 
 指定商品:,第30類「茶,茶飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,穀物の加工品,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済のスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン
 
 引用商標(登録第5100230号)は以下のとおりです(商標権者は原告)。
 「ゲンコツ」(標準文字)
 第30類「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ
 
 そして,無効審判では,4条1項16号該当,つまり,コロッケに関係のないものに・・・コロッケって付けてあるじゃん,「これを本件商標の指定商品中,「コロッケ入りの商品」以外
の商品に使用したときは,あたかも,「コロッケ入りの商品」であるかのように,その商品の品質について誤認を生じるおそれがあるといえる。
」として,指定商品「コロッケ入りのパン,コロッケ入りのサンドイッチ,コロッケ入りのハンバーガー,コロッケ入りの弁当,コロッケ入りの調理済みの丼物,コロッケ入りの調理済みカレーライス,コロッケ入りのチャーハン以外の部分は無効となったのです。

 ですが,原告というか無効審判請求人としては,いやいやいやゲンコツと類似でしょ!残りも全部無効でしょ!ということで,審決取消訴訟を提起したわけです。
 
 で,判示のとおり,やはりゲンコツコロッケの要部はゲンコツ!ということになり,あえなく類似!ということになったわけです。 
 
 大手企業だろうと何だろうと,これは致し方ない所かなあという顛末でした。